小学校6年生で行われるのが「キャリア教育」。





その「キャリア教育」でよく有りがちなのは、
「いろいろな職業について知るキャリア教育」や
「自分の将来の夢を考えよう!」というキャリア教育です。




「いろいろな職業を知る」ということは、職業に対する視野を広げることができるため、百歩譲って有りとして、

この「自分の将来の夢について考えよう!」という類のキャリア教育はあってはならんものだと考えています。





というのも、
小学6年生と言えども、まだまだ12歳。
世の中のこともまだまだわかっていない段階で
果たして「将来の夢」を全員に半ば強制的に考えさせる必要なんてあるのでしょうか!?


もちろん、子どもが個人で自発的に考える分に関して否定しているわけではありません。


わたしが申しているのは、
教師が「将来の夢について考えさせること」をキャリア教育のゴールとして、
子どもたち全員に強制的に・・・ということはあってはならんことだと考えているんです。











では、「キャリア教育」のゴールは何にすべきなのか




それは、「明日からの生き方について考えさせる」ということだと考えています。



それは一体どういうことなのか。
これから単元の流し方を説明しながら、
紹介していきます。









まず、子どもたちに考えさせるのは、
<人はどうして働くのか?>
ということです。


子どもたちの親は、
例外はありますが、
ほぼ確実に何かの仕事をしています。


そこでまずは子どもたちに
<自分たちの親、自分たちの周りの大人たちはどうして働くのか>ということについて考えさせます。



みなさんならこの問いにどう答えますか?







結局のところ
「自分たちの家族が生活できるようにするため」
「お金を稼ぐため」
というところに収束するのではないでしょうか。

実際、子どもたちに聞くと、
大抵どのクラスでも
ここに収束していきます。




そこで、次の時間からいろいろな職業の方をゲストティーチャーとして招き、
<どうして人は働くのか>
ということについて考えていこう!と投げかけます。







そして、
この次の時間からいろいろな職業の方を招き、
子どもたちに講義してもらいます。


ゲストティーチャーの方には、
・自己紹介
・仕事の紹介
・自分の子どもの頃はどんな子だったのか
・どうしてその職業を選んだのか
・仕事をする上で大切だなと思うことは何か
・子どもたちへのメッセージ

ということをベースに
1時間使って話を展開してもらうように打ち合わせをしておきます。




ここで気をつけなければならないポイントが、
講師の方との打ち合わせのときに<どうして働くのか>という視点に関しては話題にも上げず、全く触れない
というのがポイントです。







ここは子どもたちに考えさせるポイントだからです。




打ち合わせで話題にも上げなければ、
当日にその講師がこの<どうして働くのか>ということについて話すことはまず考えられませんし、
教師の意図を妙にくみ取ってしまい、
ゲストティーチャーが意図的な発言をすることもなく、
純粋にその方の仕事観を引き出すことができます。




そして、もう一つのポイントが、
子どもたちが聞く講師は少なくとも3人以上ということです。





というのも、1人や2人では、
その1人や2人の話を一般論だと結論付けるのはかなり難があるからです。





だから私の場合は最低でも5、6人の話は聞かせます。

ただし、さすがに普通に5人も6人も話を聞いていると飽きてきてしまいます。



だから、私はいつも

1日目:<どうして人は働くのか>(授業)
2日目:一般的な企業で働いている人・起業した人を4~5人程度招いた講演
     (子どもたちには誰の話が聞きたいか選択させ、1人の講師の話を1時間聞く)
3日目:それぞれの人から聞いた話を交流してクラス内で情報共有(授業)
4日目:全国レベルの講師(学年全員一斉)の講演 例:(元)プロスポーツ選手・監督など
5日目:まとめ



4日目の全国レベルの講師に関しては、
「接点がない…」という方もたくさん居るかと思いますが、
普段からアンテナを張っていると、
職員室に良く回ってくる回覧の中に、ゴロゴロとそのチャンスがあります。





という学習展開にして、
実際に子どもたちが聞くのは2人分の講義。


だけど、3日目にクラスで情報共有しているので、
間接的に残りの3,4人の話のポイントも知ることができ、
結局5,6人の職業観について知ることができる。
というようにしています。








そして、ここで重要になってくるのかこの3日目にクラスで情報を共有する場面です。

これがキャリア教育の肝と言ってもいいかもしれません。
私がキャリア教育において一番大事にすべきと考えている時間です。







では、この「キャリア教育の肝=3日目」に何をするのか。




この時間では、子どもたちには「心に残った話+心に残った理由」という話型で話すように指示します。

そして、黒板には「心に残った話」のみ。つまり、ゲストティーチャーの発言のみをゲストティーチャーごとに分けて板書します。

そして、出揃ったところで
<この3,4人が話した内容で共通することはなんだろう?>と問い、
子どもたちに共通点を見つけさせます。



すると、「人のために仕事をしている」ことや、「自分の興味をもつもの」「自分が魅力を感じる仕事をしている」というような共通点が見えてきます。




そこで、<人はどうして働くのか>という問いをもう一度問いかけると、

もしかしたら、人は人のために働いているのではないか。
もしかしたら、その仕事に魅力を感じているから働いているのではないか。


というような仮説が生まれてきます。




そこで、4日目のゲストティーチャーの話を、
”この仮説がこの4日目のゲストティーチャーにも当てはまるのか”という観点で聞いてみよう!
と投げかけ、その観点で4日目のゲストティーチャーの話を聞くように意識付け、3日目の授業を終えます。






そして、4日目のゲストティーチャーの話を聞いたのち、
5日目のまとめる時間に、
仮説はどうだったかということを確認すると、
自分たちの仮説は確かなものだったという結論に至ります。

そして、<これから先、どう生きていくことが大切なんだろう?>と投げかけると、

・自分の興味があるもの/魅力を感じるものを見つけることが大切
・人のために自分にできることってどんなことかを考え、見つけることが大切

という最終的なまとめに至り、
そのためには、大人になるまでにいろんなことを経験して、自分の能力を高めたり、視野を広げたりすることが大切なんだな。という意識にもっていく。






これが、私が考える、小学校6年生に行うべきキャリア教育の姿ではないかと考えています。





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